第7章 LPガスの安定供給
LPガス備蓄の推進と強靭な供給体制の構築
国民生活に必要不可欠な一次エネルギーの安定供給確保は、国家にとって重要な課題です。特に一次エネルギーのほとんどを輸入に頼っている我が国にとって、エネルギー源の多様化や新エネルギーの開発、輸入相手国の分散化など、様々な角度から手段を講じる必要があります。その中の1つに、国内での備蓄が挙げられます。
国家備蓄と民間備蓄
現在、日本国内で法律によって備蓄が義務付けられているエネルギーは、石油とLPガスの2種類だけです。このうち、民間企業が備蓄しているものを「民間備蓄(法定備蓄)」、国家が備蓄しているものを「国家備蓄」といい、LPガスの場合、輸入量の40日分が民間備蓄として義務付けられています。
国家備蓄は全国5か所(茨城県神栖市、石川県七尾市、岡山県倉敷市、愛媛県今治市波方町、長崎県松浦市福島町)において、国家備蓄基地の建設を決定しました。2005年7月に七尾国家石油ガス備蓄基地、9月に福島国家石油ガス備蓄基地、12月に神栖国家石油ガス備蓄基地が完成し、倉敷国家石油ガス備蓄基地、波方国家石油ガス備蓄基地も、2013 年3月に完成、操業を開始しました。2017年、倉敷基地へのガス受け入れ完了をもって、国家備蓄目標である輸入量の約50日分(約140万トン)の備蓄が達成され、LPガスの備蓄体制が完了しました。
LPガス国家備蓄基地建設地
備蓄方式について
地上備蓄…地上にある鋼製タンク内にLPガスを入れ、低温の状態で貯蔵します。
地下備蓄…地下の岩盤に巨大なトンネルを掘り、そのトンネルをタンクとしてLPガスを貯蔵します。
地下岩盤貯蔵方式
国家と民間の備蓄量
供給体制のさらなる強化に向けて
LPガスは「災害に強いエネルギー」として、過去の災害において大きな役割を果たしてきました。東日本大震災(平成23年3月発生)でも、津波や地震により被災地のLPガス供給基地も大きな被害を受けましたが、関係者による懸命の努力により、LPガスの供給に大きな支障を生じることはありませんでした。しかし、過去に例のない大規模災害への対応という点では、いくつかの課題を残しました。これを踏まえ、政府は平成24年3月、「東日本大震災を踏まえた今後のLPガス安定供給の在り方に関する調査」を取りまとめました。この報告書には「LPガスサプライチェーンにおける災害対応能力強化」対策として、中核充填所の選定と機能強化、一次・二次基地の出荷機能強化、国家備蓄の機動的放出の検討等が盛り込まれました。業界では、国の支援を受けながらこれらへの対応等を図るとともに、さらに強靭なLPガス供給体制の構築に向けて、日々努力を続けています。