第3章 様々な分野で利用されるLPガス
業務用分野におけるLPガス
LPガスは、飲食店や旅館、病院や学校などの業務用施設において重要なエネルギー源として幅広く利用されており、その需要量は年間約200万トンにのぼっています。特に最近ではガスエンジンヒートポンプエアコン(GHP)や、業務用厨房内の温度上昇を抑えるよう改善された厨房機器「涼厨」などの省エネ機器の普及が進んでいます。
ガスエンジンヒートポンプ(GHP)の特徴
ガスエンジンヒートポンプ(GHP)は、コンプレッサーをガスエンジンで駆動し、ヒートポンプによって冷暖房を行う空調システムです。電気のエアコン(EHP)と異なりガスエンジンによりポンプを駆動するため、消費電力をEHPの約1/10にまで削減することができます。また発電機を内蔵しているタイプなら、消費電力を1/100以下(およそ100W以下)にまで削減することができ、受変電設備費用の削減にもつながります。GHPは節電や電力のピークカット対策、また省CO2対策として有効です。
2020年4月には、節電と省エネ性を両立する超高効率GHP「GHP XAIR(エグゼア)」の第3世代「GHP XAIR Ⅲ」が発売されました。
GHPは節電や電力のピークカット対策、省CO2対策に貢献します。
また、内臓発電機による停電時の自立運転と外部への電力供給が可能な機種は、近年多発している自然災害対策としても有効です。
GHPの特長
GHPは消費電力が少ないため、受変電設備の削減、契約電力の抑制ができます。
設置事例
災害対策
災害時などによる停電時でも稼働が可能な「完全電源自立型」が登場。照明や携帯電話の充電、テレビの使用等が求められる避難所や、建物の共有スペース等への設置が適しています。
電源自立型GHPの稼働事例
電源自立型GHPを導入した北海道の社会福祉施設では北海道胆振東部地震(2018年9月6日)で発生したブラックアウト時に稼働し、食堂の照明、一部空調、テレビ視聴、スマートフォン充電に使用されました。
ガスエンジンコージェネレーション
ガスエンジンコージェネレーションは、ガスエンジンによる発電とその排熱を利用した給湯を同時に行うシステムです。電気と給湯を同時に効率よく利用するため、総合効率約80~85%と高く省エネに役立つほか、系統電力消費の低減にもつながります。また停電時に発電・熱供給(給湯)が可能な停電対応機も市販されており、災害時のバックアップ電源・給湯器としても活用することができます。
コージェネレーションには、5kW~30kW程度の「マイクロコージェネレーション」と呼ばれる比較的小さい出力のものと、300kW~数万kW以上の出力をもつ大容量のものとがあり、前者は飲食店やホテル、アミューズメント施設向けなどの業務用として、後者は工場向けなどの産業用として広く利用されています。
コージェネレーションの種類
コージェネレーションの特長
LPガスを需要地まで運んでその場で発電するため、系統電力に比べて送電ロスや放熱ロスがありません。
通常時と停電時の運転イメージ
業務用厨房機器「涼厨」
業務用厨房機器「涼厨」は、厨房内の温度上昇の原因であった排熱の拡散と輻射熱を低減することにより「涼しい厨房」を実現した機器です。集中排気により排気熱の厨房内への拡散を防ぎ、空気断熱によって機器表面からの輻射熱を大幅に削減することにより、従来のガス厨房では30℃を超えることもある室温を常に25℃以下に保つことができます。それによって快適性の向上、空調負荷の低減によるエネルギーコストの低減など、様々なメリットが生まれます。
涼厨対応機器(一例)
涼厨の仕組み
その他の業務用用途
LPガスはご家庭での利用のほかにも、様々な用途に利用されています。これらはいずれも「持ち運びが容易」「熱量が高い」「排気がクリーン」などのLPガスの特長を活かしたもので、現在も多種多様な機器が開発されており、その可能性はさらに広がっています。