Clwan & Powerful LPガス読本 Clwan & Powerful LPガス読本

第1章 LPガスは
クリーンエネルギー

LPガスの環境性能

温室効果ガスを削減するには、環境負荷の小さいクリーンなエネルギーを効率的に利用することが重要です。LPガスは石油や天然ガス等の化石エネルギーの中で相対的に二酸化炭素排出量が少なく、燃焼時の排出ガスも極めてクリーンなエネルギーであり、地球温暖化対策の即戦力として期待されています。

LPガスの二酸化炭素排出原単位

LPガスを燃焼させた時の二酸化炭素排出原単位は、原油を1.00とした場合、指数換算で0.86となります。ガソリン、灯油などの石油製品と比べて10%以上少なく、天然ガスを含めた化石燃料の中でもトップクラスの環境性能を持っています。

エネルギー源別総発熱量当たり標準炭素排出係数
標準炭素排出係数
gC/MJ(Gross)
指数
石炭(一般炭) 24.29 1.28
A重油 19.32 1.02
原油 18.98 1.00
ガソリン 18.71 0.99
灯油 18.71 0.99
LPガス 16.37 0.86
都市ガス 13.95 0.73

(出典:総合エネルギー統計(2020年1月改訂)

プロパン・ブタン別二酸化炭素排出量原単位
kg当たり m3当たり
プロパン 3.0kg 6.0kg
ブタン 3.0kg 8.5kg
単位熱量当たりの排出係数を原油を1として指数表示

LCI分析における二酸化炭素排出原単位

「ライフサイクルインベントリ(=Life Cycle Inventory:LCI)分析」とは、燃焼時の二酸化炭素排出量だけではなく、各エネルギーの生産、輸送段階における排出量まで含めたトータルの二酸化炭素排出量を推定する方法です。これによって各エネルギーの環境性能をより厳密に比較することができます。

「LCI分析」によると、LPガスはLNG、都市ガスに比べ、燃焼時の排出量は大きいものの、合計の排出量はガス体エネルギーとして都市ガスとともにクリーンなエネルギーであることが分かります。

エネルギー別二酸化炭素排出原単位

(g-CO2/MJ)

石炭 石油 LNG 都市ガス LPガス
生産 2.16 1.31 9.44 9.08 3.58
輸送 2.48 1.18 2.37 2.28 2.32
二次生産 - 2.84 0.14 0.49 0.69
設備(貯蔵タンク等) 0.11 0.08 0.12 0.50 0.09
小計 4.75 5.41 12.07 12.35 6.68
燃焼時 90.23 68.57 49.50 50.60 59.03
合計 94.98 73.98 61.57 62.95 65.71
エネルギー製造の二酸化炭素排出原単位

(出所:日本工業大学「LPガスの環境側面の評価―エネルギー製造・利用のLCI(ライフサイクルインベントリ)分析―」2009年を元に作成)

機器別二酸化炭素排出量比較

同じように各機器の二酸化炭素排出量をLCI分析によって比較してみると、ガスコンロはIHヒーターと比べて約半分、燃料電池は商用電力とエコキュートを併用した場合に比べて約40%減、同じくガスエンジンコージェネレーションと比較すると約30%減となり、二酸化炭素排出量という点ではガス機器の方が圧倒的に優れていることが分かります。

機器別二酸化炭素排出原単位

(出所:日本工業大学「LPガスの環境側面の評価―エネルギー製造・利用のLCI(ライフサイクルインベントリ)分析―」2009年)

LPG車とガソリン車との二酸化炭素排出量比較

また、LPG車とガソリン車の二酸化炭素排出量を比較してみると、2300ccクラスでは約8.7%、ハイブリッドタイプでは約8.0%程度、LPG車の二酸化炭素排出量の方が少なくなっています。さらに大気汚染の原因とされているNOx(窒素酸化物)やPM(粒子状物質)もディーゼル車と比べて大幅に少なく排気ガスがクリーンであることから、LPG車は環境問題に対する現実的かつ迅速に対応可能な自動車であると言えます。

環境性能比較

(出所:日本工業大学「LPガスの環境側面の評価―エネルギー製造・利用のLCI(ライフサイクルインベントリ)分析―」2009年)

出展:クリーンディーゼル車

CNG車:低公害車ガイドブック2003 環境省・経済産業省・国土交通省

LPG車:日本自動車研究所調査データ

ディーゼル車:日本車両検査協会測定データ

第2の温室効果ガス「ブラックカーボン」

地球温暖化に影響を与えるガスは、二酸化炭素だけではありません。その意味で現在注目を集めているのが、「ブラックカーボン(Black Carbon・黒色炭素)」です。ボイラーなどの燃焼機器に付着している黒い残渣分である煤(すす)は、このブラックカーボンと他物質との混合物です。

ある研究によると、1750年以降に排出された地球温暖化ガスの効果による温度上昇のうち、全体の約40%がこのブラックカーボンの寄与によるものとされており、残りの大部分を占めている二酸化炭素に次いで、2番目に温室効果が高いとされています。

地球の温度上昇に対するブラックカーボンの寄与度

単位:℃

温室効果ガス 1.6
化石燃料およびバイオ燃料の煤(すす) 0.3
都市熱 0.05
冷却分 -1.2
合計の温度上昇量 0.8

(出典:Jacobson, M.Z, 2007, Black carbon and global warming, U.H.o. Representatives, Washington DC.)

ブラックカーボンは、その地球温暖化係数について合意が得られていないため、京都議定書における地球温暖化ガスの定義に含まれていません。しかしこのブラックカーボンの排出量を炭素排出量に含めた場合と、単純に二酸化炭素の排出量だけで比較した場合とでは、全体への寄与度が大きく異なってくる可能性があります。

ブラックカーボンを加味した場合とそうでない場合の相対排出量

(出典:World LP Gas Association, 2010, Clearing The Air: Black Carbon, Climate Policy and LP Gas.)

このグラフで示すように、LPガスの燃焼時のブラックカーボンの排出量は、燃焼機器の性能による違いもありますが、ディーゼルや木質バイオマスに比べて非常に小さくなっています。これは、LPガスが二酸化炭素もブラックカーボンの排出量も少ない、真にクリーンなエネルギーであることを裏付けています。

またブラックカーボンは地球温暖化だけではなく、PM2.5に代表されるように、人間の健康に与える影響も無視できないため、特にバイオマス資源への依存度が高い途上国において、クリーンなLPガスの普及が求められています。

クリーンエネルギー「LPガス」

LPガスは、ブラックカーボンなどの浮遊性粒子状物質(SPM)のほかにも、大気汚染の原因とされている窒素酸化物(NOx)や硫黄酸化物(SOx)をほとんど排出しないため、特に都市部の自動車交通による大気汚染防止の最も現実的かつ容易な選択肢として、世界各地の都市でLPG車の導入が進められています。また、地球を有害な紫外線から守っているオゾン層を破壊するフロンガスの代替として、それと同等の蒸発性能を持つLPガスは、スプレーなどの噴霧助剤としても広く使われています。