第3章 様々な分野で利用されるLPガス
産業用分野におけるLPガス
LPガスの産業用用途には、工業用、化学原料用、都市ガス用、電力用があり、全体の需要のおよそ半分を占めています。工業用としては、金属および非鉄金属加工の際の加熱用、部材および食品の乾燥用など、非常に多岐にわたります。その他、エチレン・プロピレンなどの化学製品の原料、都市ガスの増熱用、発電所での熱源としても利用されています。
食品加工用
- かまぼこ、ちくわ、魚干物などの水産加工品
- ハム、ベーコンなどの燻製
- せんべい、あられ、パン、菓子、ビスケット、モナカ、アイスコーンの焙焼
- そば、うどん、製麺の乾燥
- 酒の分析等
繊維加工用
- 繊維加工用の繊維、染色整理工程での毛焼
- 染色樹脂加工の予備乾燥、熱処理、幅出し、風合い
- 仕上げ加工等
塗装乾燥用
- 金属塗装乾燥
- ブリキ印刷の焼き付け塗装
- 木工塗装乾燥等
樹脂加工用
- ポリエチレン、フェノール、エポキシ、フッ素などの樹脂コーティング等
紙器印刷業用
- 印刷紙乾燥、セロハン乾燥の工程等
窯業用
- ガラスの溶解、成型加工、徐冷
- 陶磁器の焼成
- 燻し瓦の焼成
- ファインセラミックスの加熱・切断・焼成等
非鉄金属加工用
- 非鉄金属(アルミニウム、亜鉛、銅等)の溶解
- 鋳鉄の加熱
- シェルモード等
鉄加工用
- 繊鉄加工用切断
- 鋼材加熱
- 鍛造加熱等
農林水産業用
- 葉タバコの乾燥・茶葉の乾燥・穀物の乾燥・椎茸の乾燥
- ハウス栽培の暖房機用・炭酸ガス発生機用
- 水耕栽培・CA貯蔵・育雛・養豚
- 合板の乾燥
- コンブの乾燥・ワカメの乾燥・海苔の乾燥等
進むLPガスへの燃料転換
燃焼時CO2の排出量が多い重油等の液体燃料からクリーンなLPガスへの燃料転換、または高効率の機器を導入することにより省CO2および省エネを促進しています。
導入事例
大場農園様(佐賀県唐津市)
重油ボイラーからGHPへの置き換えにより、エネルギー使用量は約30%削減、年間CO2排出量も約30%削減。GHPは地面の方からハウス全体を暖めるので、使用したハウスのみかんは木の下部になったみかんでも濃く色づいた。2016年7月にはGHPを導入したハウスで一作目のみかんを出荷。「色が濃く、甘みが強い、いいみかんができた」と手ごたえを感じている。
丸本本間水産株式会社様(北海道札幌市)
灯油ボイラ-から高効率蒸気ボイラー2台への転換により、CO221.2%減、燃料費46.1%削減。メンテナンス費用約80%削減に成功。省エネルギー率12.4%向上、煤(すす)の発生も少なく、親会社の掲げる高い環境基準も満たすことになった。
武田紙器株式会社様(千葉県柏市)
震災による計画停電の経験や事業複雑化による電気代の高騰により重油からLPガスへの燃料転換を決断。CO2は54.5%減、ランニングコストも50%削減を達成。
全体空調も合わせてGHPを設置したためより空調効果が高まり、細やかな設定ができるようになった。LPガスタンクの容量が40~60%になると自動的に充填に来るシステムになり、メンテナンスの負担も減った。
有限会社シンセイフーズ様(三重県多気郡)
重油設備の老朽化や安全性の懸念によりA重油ボイラーからLPガスボイラの燃料転換を決断。安全性の向上やメンテナンス性の改善、燃料の残量管理の負担軽減等、十分な効果があると実感している。
有限会社浅野保温様(愛知県丹羽郡)
社用車のガソリン車をLPGバイフューエル車に切り替え、簡易型LPガススタンドを導入した。車1台あたりの走行距離は2~3万km/年になり、関西や関東に施工に行く際にも給油することなく移動が可能で、燃料費も1台あたり10~20万円/年削減された。また、災害対応バルクとLPガス非常用発電機と非常用炊き出しセットも導入し、BCPと地域防災が評価され、指定避難所として認知を受けた。
LPガス用FRP容器の販売開始
2015年12月、LPガス用FRP(Fiber Reinforced Plastics)容器の一般販売が開始されました。
FRP容器は、繊維強化プラスチック製の容器で、重量が鋼製容器の半分程度と軽く可搬性に優れていること、火事にあっても爆発しないなど安全性が高いこと、またカラフルで美観性もよく、室内に置いても違和感がないなど、多くのメリットを持つ新しいLPガス容器です。LPガス配管やガス栓が無いところでも軽量なFRP容器を設置し、思うように暖房・厨房・乾燥機等を使用することができます。また、持ち運びが容易である利点を活かし、消費者ニーズの高いアウトドア等の活用も広がります。
さらに、都市ガスユーザーやオール電化ユーザーにとって、災害時にあっては、自衛的エネルギー備蓄にもなります。今後、LPガスを活用するシーンのさらなる増加につながると期待されています
FRP容器の特長
使用イメージ
LPガス燃料船
国際海事機関(IMO)は2020年より船舶燃料の硫黄分を0.5%に規制強化しています。硫黄分低減には適合油(LS重油)の使用、スクラバーの装置、LNG燃料船への変更等の選択肢があり、現状では適合油の使用が当面の対応と見られていますが、燃料費等の負担が世界経済に与える影響は大きいと考えられます。
LNG燃料船は既に200隻を超える船舶が就航しています。これに対し、LPガス燃料船はLPガス船舶用エンジンの開発が現在進められている段階です。
LPガスの環境性能はSOxの排出がC重油と比較して90~97%の削減率、CO2排出がC重油と比較して20%の削減率(LNGは23%)、NOxの削減率もLNGとほぼ匹敵する効果が期待出来ます。沸点はLNGのマイナス167℃に比べ、プロパンではマイナス42℃と容易であることから、バンカリング(燃料補給)等で既存インフラを活用出来るメリットが大きいと考えられます。
LPガス燃料船の開発は、すでに30隻超のLPガス大型運搬船(VLGC)において、LPガスを主燃料とした主機での建造、後付け改造(レトロフィット)されることが決まっており、中小型船を含めた商船等への搭載も期待されています。
またIMOの規制が温室効果ガスに拡大されることを考慮すれば、技術開発等の課題はあるものの、内航船を含めたLPガス燃料船の今後の展開は大いに期待できます。SOxについては、スクラバー装置から脱硫した排水をそのまま海水中に放出します。海水を使用したオープンループ式のスクラバー装置に対して、汚染物質の海洋投棄であるという懸念を示す国もあります。LPガス燃料船が採用、導入されれば、排水問題の他に、油濁物質流出等の海洋汚染の懸念、問題等が発生することもなくなります。